奥村彪生のエッセイ

伝承料理研究家の奥村彪生先生が季節の食材など旬のお話をお届け。

スペシャリストのプロフィール

奥村彪生 伝承料理研究科 / 大阪市立大学非常勤講師 / 奥村彪生料理スタジオ『道楽亭』主宰

奥村彪生 大阪市立大学非常勤講師。和歌山県生まれ。伝承料理研究家。奥村彪生料理スタジオ『道楽亭』主宰。平成6年度 食生活文化賞受賞。平成13年和歌山県文化功労賞受賞。平成21年 学位論文『日本のめん類の歴史と文化』を美作大学に提出。学術博士となる。日本各地に古くから伝わる料理を丹念なフィールドワークによって掘り起こす一方で、文献資料を広く渉猟して食文化の歴史的研究に取り組み、日本人の食生活の変化と外来の食文化の受容の歴史を跡付ける。奈良、飛鳥時代から現代までの様々な料理を復元。世界の伝統料理にも詳しい。


【テレビ出演歴】

  • NHK「きょうの料理」
  • NHK「まる得マガジン 週末ストック術」「まる得マガジン 干物・乾物術」 など

【書籍他】

  • 『日本めん食文化一三〇〇年』(農村漁村文化協会)
  • 『おもしろふしぎ日本の伝統食材』 既刊10巻(農村漁村文化協会)
  • 『おくむらあやお ふるさとの伝承料理』全13巻(農村漁村文化協会)
  • NHKまる得マガジンMOOK 『肉も、野菜も、魚でも! ムダなくかんたん 食材ストック塾』 (NHK出版)


第6回 皐月 端午の節句のちまきやかしわ餅のお話

さつきになると草木の青葉・若葉の緑の色がひときわあでやかになります。
天を仰げば青い空、太陽はおだやかに輝き、吹く風はさわやか。
その天空に鯉のぼりがさつきの風に吹かれて泳ぐ。
その様は元気はつらつとした子供達の姿を写しているように見えます。
そう、鯉のぼりは子供達が健やかに成長することを願って、江戸時代から揚げられるようになったのです。

さつきの最初の午(うま)の日にケガレを祓うためにヨモギを採って人形を作り、
門戸の上にかける中国揚子江南方の稲作地帯の風習が奈良時代に伝わりました。
これを端午(たんご)といいます。

この日、中国ではショウブを刻み酒に浮かべて飲みました。
また、蘭を風呂に入れて浴び、ケガレを祓いました。
これらが日本に伝わり、武士が日本の国を支配するようになった鎌倉時代に武をとうとぶということで
ヨモギやランがショウブにとって代えられました。

中国江南地方ではさつきを悪月と呼び、食べ物に関する禁忌が多くあります。
その理由は昔の五月は現在の六月に当たり、日照りも湿度も上がり、食べ物が腐敗しやすくなり、それを食べた人が食傷したからです。
食べ物の腐敗を防ぐために、笹や竹の皮、木の葉(カシワやホウバ、サルトリイバラ、渋ガキ)などで包むようになりました。
そのさきがけが粽(ちまき)です。もともとはチガヤで包んでいました。

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笹や竹の皮にはサルチル酸という抗菌作用のある物質が含まれており、
カシワやサンキライ、ホウバ、渋ガキの葉にはフィトンチッドという揮発性の殺菌物質が含まれているのです。
そして緑の色には人の気持ちをおだやかにしてくれるホルモンを分泌させる働きがあります。

あんを入れたかしわ餅は日本で江戸時代に生まれました。
土地によってサンキライやホウバを使います。
本カシワは新葉が出てくると枯葉が落ちることから、後継ぎが絶えないと尊ばれ、子孫繁栄をもたらしてくれると信じられているのです。

端午の節句にはショウブ湯に入ってケガレを祓い、粽やかしわ餅を食べて、心身を健やかにして夏を迎えましょう。